ENTRIES
COMMENTS
TRACKBACK
ARCHIVES
LINKS
PROFILE
MOBILE
qrcode
RECOMMEND
SPONSORED LINKS

11
--
1
2
3
4
5
6
7
8
9
10
11
12
13
14
15
16
17
18
19
20
21
22
23
24
25
26
27
28
29
30
--
>>
<<
--

僧のゆく先

修行した日、しなかった日。
<< 其百七想  『おでん』 | main | 其百九想  『さよならポップス 後編』 >>
スポンサーサイト

一定期間更新がないため広告を表示しています

| - | | - | - |
其百八想  『さよならポップス 前編』


 テレビかラジオさえある環境なら、世界中どこでだって少年少女は彼女に憧れるんじゃないかな。ポプ子は日本の片田舎でも案の定輝いていて、案の定悶々としていた少年は彼女に憧れた。

 ポプ子の放つ空気は魔法の空気。優しいのにとても大きな声で僕らを包む。おしとかやかなファッションもロックなファッションもサイケでさえ自分流で着こなして、そしていつもそれが似合っている。

 ポプ子は高嶺の花。みんな見ているだけで満足。僕もそう。でもいつからかそれだけじゃ満足できなくなった。と言うか、実は彼女に近づいた理由はとても不純だった。自分の声じゃどんなに工夫しても遠くへ届かないから、彼女に教えて欲しかったんだ。


 それからずっと彼女のそばにいては真似をした。声の出し方、ファッション、雰囲気、仕草、あげくには彼女がきっと持っているであろう思想なんてものまで勝手に想像して気取ってみた。彼女といるととても優しい気分になった。でも時々何故か激しく苛立った。彼女は時々一緒に悲しんだり憂鬱になったりしてくれた。でも時々彼女の気持ちがわからなかった。

 彼女の魔法は形だけなら真似できるんだ。でもそれは魔法みたいなものでしかない。ようやく僕がその魔法を、『みたいなもの』でなく使えるようになったのは彼女の側にいて三年を過ぎようかという時だった。それから彼女の魔法の全てを自分のものにしようとした。でも、結局、今でさえ半分も、恐らく四分の一も僕は覚えられていない。


 彼女の魔法を使えても、彼女になれるわけじゃない。彼女のような声も空気も僕は出せない。僕の生み出せる空気はあくまでも僕の空気でしかなく、そこにいるのは僕だ。

 彼女の空気は彼女であるけど彼女でない。彼女の声にも空気にも彼女はいない。

 そのことに気付いたのは魔法を覚え始めてからだいぶ経ってからだった。僕は思う。それじゃあ彼女とは誰なんだろう?ポプ子は本当に存在しているのか?


| - | 01:29 | comments(0) | trackbacks(1) |
スポンサーサイト
| - | 01:29 | - | - |
コメント
コメントする









この記事のトラックバックURL
http://ascent-s.jugem.jp/trackback/127
トラックバック
-
管理者の承認待ちトラックバックです。
| - | 2010/08/26 6:57 PM |